東京地方裁判所 昭和39年(ワ)2646号 判決 1964年8月07日
原告 東京マツダ販売株式会社
右代表者代表取締役 石塚秀男
右訴訟代理人弁護士 山本政喜
田井純
乙黒伸雄
被告 長谷川兼松
被告 金井一正
主文
被告長谷川兼松は原告に対し別紙目録記載の自動車を引渡せ。
被告金井一正は原告に対し金一四万五、〇〇〇円及びこれに対する昭和三九年四月九日から支払ずみまで年六分の金銭の支払をせよ。
訴訟費用は被告らの負担とする。
この判決は仮に執行することができる。
事実
≪省略≫
理由
一、被告長谷川に対する請求
別紙目録記載の自動車が原告の所有であること及び被告長谷川が被告金井より右自動車の引渡を受けたことは当事者間に争がない。
被告は、仮処分執行により右自動車を引揚げられたので、現在これを占有していないと主張するが、仮処分は終局目的の強制執行を保全するため暫定的になされるものであつて終局的な効力を生ずるものではなく、仮処分命令の取消によつてその執行は原状に回復することができ、又何時でもその執行に対して異議申立をなしうるのであるから、被告が終局的に本件自動車の占有を失うに至つたものということはできない。
然らば、被告はその占有を正当ならしめる権原を有することについて何ら主張立証するところがないから、原告に対し、右自動車を引渡すべき義務があるものといわなければならない。
二、被告金井に対する請求
原告の請求原因事実一、のうち被告金井が原告より原告主張の契約により別紙目録記載の自動車を買受けたこと及び原告の請求原因事実二、三は当事者間に争がない。
証人酒井修の証言によれば、右自動車の現在の評価額は金一三万円であることが認められるので、原告は被告金井の債務不履行により、右自動車売買代金残金二七万五、〇〇〇円より金一三万円を差引いた金一四万五、〇〇〇円の損害を蒙つたことになる。
しかして、原告が自動車の販売を業とする会社であることは、弁論の全趣旨及び証人酒井修の証言により明かなところである。
然らば、被告金井は原告に対し、損害賠償として金一四万五、〇〇〇円及びこれに対する本件訴状送達の翌日であること記録上明かな昭和三九年四月九日から支払ずみまで商法所定の年六分の遅延損害金を支払うべき義務があるものといわなければならない。
三、結論
以上の次第により、原告の本訴請求は正当であるから認容し、訴訟費用につき民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文、仮執行につき同法第一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西川豊長)